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糸子さんが怒るのはもっともだ。僧侶という厳粛な身でありながら泣きの涙の遺族の前でおならをたれて羞じないようではケダモノに劣るといわれたが、〇3の少女の言葉ながらも正しいことが身にしみて分ったのだ。さて、そこで、なんとしても人前ではおならをもらさぬようにしたいが、食べ物の選び方でどうにかならぬかな』

この3人は家じゅう、誰もみな元気でいたけれども、善ちゃんだけは、お父さんがビルマで戰死して、お母さんは甲府の疎開さきで病気で亡くなって、お姉さんと2人で東京へ戻って來た。いまは池上の叔父さんの家にいる。

いつもの端麗な顔だった。羽織なしに、紫と臙脂との縞お召の襟元を、窮屈そうなほどきりっと合せていた。その身扮で藁俵と枯枝とを胸いっぱいに抱えていた。

彼女は深く頷いてるらしい。前屈みがちに坐っている。赤っぽく野暮ったい帯のしめ方が、へんにだぶついている。胸の肉が薄いかわりに、腹には贅肉がついていて、臍には黒い垢がたまっているのが、わかる。

行列の中に、やっと、リュックをおろして、2人の盲目の人はほっとしている。

彼女は紫檀の机の上に両手をのせて、1冊の書物をもてあそんでいたが、硝子戸ごしにさしてくる光線のなかで、指先の爪が薄桃色の貝殻のように光った。殆んど関節の存在をも示さずに、先細りにすんなりと伸びた指の先に、その可愛いい貝殻の爪がはめこまれていた。光線のなかにあるせいか、指全体が、生きてるのか死んでるのか分らず、ただこまかく自在に動き、爪の表面が時々光った。

『いけないよ。』

心境とは心の……魂の……境地である以上、さまざまの種類がある。或は歌い、或は叫び、或は黙し、或は穿鑿し、或は静観する。しかしそれには常に生きた血が通っている。思想は頭の働きであり、感情は心の働きであるけれども、心境はそれらのもの1切を含めた生きた世界である。

お君は監獄の中にいる夫に、赤ん坊を見せてやるために、久し振りで面会に出掛けて行った。夫の顔は少し白くなっていたが大変元気だった。お君の首になったのを聞くと、編笠をテーブルに叩きつけて怒った。それでも胸につけてある番号のきれをいじりながら、自分の子供を眼を細くして見ていた。そして半分テレながら、赤ん坊の頬ぺたを突ッついたりして、大きな声を出して笑った。

そういうなら当然、文芸批評家の教養というものも問題にならずには措かないわけだが、それに就いてはおのずから触れることも出来よう。いずれにしてもこれを単に文学の世界だけの問題として片づけることは、それこそ教養のない片づけ方といわねばなるまい。というのは現に、作家の教養に就いての要求は、作家の社会的歴史的知識、そうした社会理論や1般の科学的認識、を要求するということがその動機の1つだったのであって、夫は明らかに作家が単なる文学の世界乃至文壇にその作家意識を局限してはならぬという、注文なり反省なりの結果であったからだ。

何かいいことはないかな。倶樂部員があっというような、いいことをしたいものだと思っていたので、見るもの聞くもの珍らしく、とうとう歩いて新宿驛に行ってみた。

そういって、煙のガンちゃんは、眼をつぶって點字新聞を指でおさえてみている。點字新聞は汚れてぼろぼろだった。みんな不思議そうに、その點字新聞をのぞきこんだ。

クリスチナ・ロゼチの『しんぐ・さんぐ』を讀んで、こんなのを作つてみたらと思つて試みたものです。その當時はまだ昨今大流行の童謠という言葉はなかったようで。

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